レポート | スタートアップ採用ではリモートワークはまだ健在

最終更新日 June 3, 2026
レポート | スタートアップ採用ではリモートワークはまだ健在

エグゼクティブサマリー

「もうリモートは終わった」——そう言い切る前に、実際の採用文を数えてみました。題材にしたのは Hacker News の月例スレッド「Ask HN: Who is hiring?」。2025年5月と2026年5月の2回分から、トップレベルの採用投稿619件を拾い、フルリモート・ハイブリッド・出社型がどう増減したかを一件ずつ仕分けしています。

まず数字から。Hacker News という場では、フルリモートがいまだに最も多い働き方なんです。不明分を除いた2026年5月の分類済み投稿のうち、46.3%がフルリモート。1年前は48.1%でしたから、下げ幅はわずか1.8ポイント。これを「崩壊」と呼ぶのは、さすがに無理があります。

代わりに存在感を増したのがハイブリッドで、22.5%から26.1%へと3.6ポイント上がりました。出社型は逆に29.4%から27.7%へ縮小。つまり起きているのは、全員オフィスへ戻れという急ブレーキではなく、両端からハイブリッドへ静かに人が寄っていく動きだ、ということになります。

ところが、それ以上に速く動いた指標がもう一つありました。給与をはっきり書く投稿の割合です。20.5%から27.4%へ。ビザ支援への言及がほぼ動かなかったのと対照的でした。採用や雇用主ブランディングという切り口で眺めると、本当に語るべき変化はこちらかもしれません。技術職の求人文が、報酬と勤務スタイルを以前より正直に明記するようになった、というわけです。

共有しやすいポイント

  1. Hacker News の採用サンプルでは、フルリモートが今も最大の働き方:2026年5月の分類済み投稿の46.3%。
  2. フルリモートは前年比で1.8ポイントの微減にとどまり、48.1%から46.3%へ。
  3. ハイブリッドは22.5%から26.1%へ3.6ポイント上昇し、本レポートで最大の動き。
  4. 出社型も29.4%から27.7%へ下がっており、ハイブリッドはフルリモートと出社型の両方から伸びていると考えられる。
  5. 給与の明示は20.5%から27.4%へ上昇し、どの働き方区分よりも大きな動き。
  6. ビザ支援への言及は2.6%から2.8%へとほぼ変化なし。
  7. このサンプルは、米国労働市場全体ではなく、リモートに親和的な技術系採用チャネルを自選して集めたものです。

大企業の社内通達ばかり追いかけていると、2026年のリモートワークはもう片がついたように見えてくるはずです。大手は社員をオフィスへ呼び戻し、出社する曜日が決められ、フルリモート企業はコロナ禍だけの例外だった——だいたいこんな語り口でしょう。この筋書き、まるきり外れているわけではありません。ただ、これで全体を語ったつもりになると、肝心な層が抜け落ちます。そこに出てくるのは名の通った大手の人事方針であって、いまも表立ってエンジニアを募集している中小ソフトウェアチームが書いている採用文ではないからです。

本レポートで覗き込みたいのは、まさにその目立たない層です。断っておくと、Hacker News の採用スレッドは完璧な労働市場の縮図ではありませんし、国勢調査のように扱うつもりもありません。それでもここを選んだのには理由があります。読者がごまかしの効かない人たちだからです。投稿する企業は、エンジニアや創業者、技術系のオペレーターに向かってじかに語りかけている。だから「フルリモート」「ハイブリッド」「出社型」と書けば、候補者はその言葉を文字どおり受け取る——そういう前提で書かれているはずなんです。

この結果をブログ用の一文にまとめるなら、こうでしょう。RTO(出社回帰)の波はたしかに来ているが、スタートアップ界隈の技術採用からリモート重視の求人を消し去ったわけではない。動き方は急転換ではなくハイブリッドへのゆるやかなシフトに近く、しかも勤務方針の変化よりも給与の透明化のほうが先を走っている、と。

Amazon は週5出社を義務づけ、Salesforce は「チーム合意」という枠組みを導入し、Goldman Sachs に至っては恒久的な週5出社を宣言しました。この1年半というもの、RTO(Return to Office)はほぼ毎月のように見出しを賑わせ、大手が順番にリモートの店じまいを表明してきたわけです。そんな見出しばかり見ていれば、リモートワークそのものが店じまいに向かっているように感じても、それは責められません。

でも、その印象を別の角度から裏取りしたかった。そこで目をつけたのが Hacker News です。毎月1日、whoishiring というアカウントが「Ask HN: Who is hiring?」という固定スレッドを立てます。ここが面白いのは、上場企業の広報文ではないこと。書いているのはエンジニア本人、スタートアップの創業者、小さなチームです。月に数百のコメントが連なり、その一つひとつが1社の求人になっている。今回はそこから2025年5月と2026年5月分を引っ張り、合計619件について、フルリモート/ハイブリッド/出社型の比率がどう変わったかを見ていきました。

出てきた絵柄は複雑ではないのですが、大手の広報が流す物語とはどうにも噛み合いません。フルリモートは依然として Hacker News 採用コミュニティで単独トップの働き方で、不明を除けば46.3%。12か月前の48.1%から、たった1.8ポイント落ちただけでした。減ってはいる。けれど、消えてはいないんです。

その隣で、ハイブリッドが3.6ポイント増えています(不明を除いて22.5%→26.1%)。データ全体で最も明確な動きがこれです。注目したいのは、ハイブリッドが客を奪った相手がフルリモートだけではない点。出社型からもしっかりシェアを取っています(出社型は-1.7ポイント)。要するに、起きたのは単純な「フルリモート→ハイブリッド」の移動ではなく、両極が足並みをそろえて真ん中へ寄ってきた、ということなんですね。

そして、意外な数字が一つ。給与開示率は20.5%から27.4%へ、なんと+6.9ポイント。データセット中で最速の伸びです。対するビザ支援の言及はほぼ無風(2.6%→2.8%)。片方だけが跳ね、もう片方は止まったまま——この落差の背後には、別々の力が働いています。給与開示を押し上げているのは州レベルの賃金透明性法で、2023〜2025年にかけてカリフォルニア、コロラド、ニューヨーク、ワシントンが相次いで制定・強化しました。Hacker News の採用文化も、その流れに引っ張られて変わってきたわけです。一方のビザ支援は H-1B 政策の影響下にありますが、2024〜2026年はむしろ締めつけが強まる方向。だから言及率が横ばい〜やや控えめなのは、実態どおりと言えます。

ここまでを束ねると、データの語る筋は一本です。Hacker News 採用コミュニティの中で起きている RTO は、革命ではなく再均衡。 フルリモートはなお優勢、ハイブリッドはこっそり拡大、出社型はじわじわ後退。そして採用市場全体では給与の透明化が加速している。では、ひとつずつ層を剥がしていきましょう。


1. 現在の分布:フルリモートは依然として46.3%で首位

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2026-05 のスレッドでは、317件の採用コメントが次の分布になりました。

働き方投稿数全体に占める割合不明を除く割合
フルリモート14244.8%46.3%
ハイブリッド8025.2%26.1%
出社型8526.8%27.7%
不明103.2%

不明にあたるのが3.2%。冒頭の段落でリモートかハイブリッドか出社かを明示していないコメントが、ここに落ちます。多くは、独自フォーマットで書いていたり、採用ページのリンクだけ貼っていたりするパターンです。月どうしをきれいに比べるため、ここから先は不明を除く割合で話を進めます。

その不明を抜けば、フルリモートは46.3%でなお単独首位。ハイブリッド26.1%の約1.8倍、出社型27.7%の約1.7倍という勘定になります。

この数字、どう受け止めればいいのでしょう。Hacker News に集まるのは、開発者やスタートアップ、立ち上げ期のエンジニアチームが中心です。その母集団の中で、投稿のおよそ半分がいまもはっきりフルリモートを掲げている。「リモートは死んだ」を本気で信じたいなら、「リモートに前向きな最先端の技術コミュニティ」とさんざん言われてきたこの場所で、なぜ46%ものフルリモートが生き残っているのかを説明しなければなりません。

逃げ道はあります。Hacker News なんて全体市場の代表じゃない、もっと広い世界ではリモートはとっくに過去の話だ、という言い分です。ただしこれ、サンプルの狭さを言い訳に使っているだけなんですよね。ここで2つ、認めておくべきことがあります。一つ目。Hacker News はたしかに一部分のサンプルにすぎませんが、ソフトウェア採用の中ではけっして無視できない一角を押さえています。とりわけ中小企業、初期スタートアップ、LinkedIn Premium や Indeed のスポンサー枠に金を出せない独立系エンジニアが厚い。二つ目。そのサンプルの中でフルリモートが踏みとどまっている、それ自体がシグナルです。つまり「現に在宅運用できている企業」の集合では、リモートはまるで死んでいないのです。

2. 12か月で何が変わったか:ハイブリッドが静かに3.6ポイント増

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2つのスレッドを不明除外でそろえると、こうなります。

働き方2025-052026-05変化
フルリモート48.1%46.3%-1.8 pt
ハイブリッド22.5%26.1%+3.6 pt
出社型29.4%27.7%-1.7 pt

データ内で群を抜いて大きい動きが、ハイブリッドの+3.6ポイント。フルリモートが1.8ポイント、出社型が1.7ポイントずつ退き、その分がハイブリッドへ集まってきた格好です。この移り方が、なかなか含蓄に富みます。 かりにハイブリッドの増加がフルリモートからの乗り換えだけなら、出社型は動かないはず。なのに現実には、出社型もほぼ同じだけ目減りしました。ハイブリッドは両側から同時に客を吸い上げている、というわけです。

「両端が中央へ寄る」というこの動きは、大手の広報が描く「リモートが出社に切り替わった」物語とは別物です。Hacker News の採用データが映しているのは、むしろ働き方の再均衡。リモートからの撤退でもオフィスへの全面回帰でもなく、真ん中のハイブリッドが両極からシェアを受け取って根を張っていく——そういう光景なんです。

ではなぜ、HN 圏ではハイブリッドが安定するのか。一つ考えられるのは、投稿の敷居が LinkedIn より高いことです。HN のアカウントが要る、書いたものは同業の目にさらされる、話を盛ればすぐ突っ込みが入る。そんな公開査読のフィルターをくぐった上で「ハイブリッド(週3出社)」と書く企業は、たいていそれを現に回していて、中身がかなり具体的です。お題目ではない。だからこそ、ここで出た26.1%というハイブリッド比率は、LinkedIn でよく見るふんわりした「Hybrid (Flexible)」とは違って、実体を伴った“本物のハイブリッド”だと見ていいでしょう。

グロースや採用の現場担当者にとって、ここからの含意ははっきりしています。「ハイブリッドが新しい標準」という見立ては、HN データでもある程度は裏づくものの、ハイブリッドはまだ投稿の26%どまりだということ。自社を「ハイブリッド企業」として売り出したところで、刺さる相手は思ったより少し小ぶりかもしれません。なにしろフルリモートが1.8倍も大きいのですから。

3. 今もフルリモート採用を出している企業

2026-05 のスレッドでフルリモート求人を出した企業から、上位15社を挙げます。

順位企業フルリモート投稿数
1Doubling1
2Emergences Labs (emergences.ai)1
3CodeWeavers1
4OpenVPN Inc.1
5Amplify Renewables1
6IPinfo.io1
7In The Loop (intheloop.engineering)1
8Deep Core Technology1
9Loophole Labs1
10PostHog1
11Railway1
12Enveritas (YC S18, non-profit)1
13Form AI1
14PlantingSpace1
15SEEKING FREELANCER1

この一覧、バズったクリエイターのトップ10みたいな派手な格差にはなりません。HN の求人は1社あたり月1件が基本なので、グラフにすればほぼまっ平らです。とはいえ、2026-05 になってもフルリモートをはっきり掲げて投稿してくる企業がいる——そのこと自体が、このデータでは見逃せないシグナルなんです。彼らは2024〜2026年の RTO の逆風の中でも、リモートに優しい雇用主ブランドを守る側を選び、その方針を採用文に堂々と書き込んでいます。

なかでも目を引くのが PostHog。UK と米国にチームを構えるオープンソースのプロダクト分析企業で、もとからリモートファーストの会社です。2026年5月のスレッドに姿を見せているという事実は、リモートファーストのスタートアップが RTO の波をかぶってもエンジニア候補を引き寄せられること、そしていまも HN をエンジニア向けの場として使い続けていることを物語ります。CodeWeavers(オープンソース Wine の企業)、IPinfo、Loophole Labs も似たタイプで、開発者向けの顧客を抱える技術主導の中堅。自然とリモートファーストへ傾く面々です。

雇用主ブランディングの観点でいえば、大事なのは順位そのものより、この一覧が成立していることのほうです。2026年でもなお「採用でフルリモートを公言する」のは強いシグナルで、リモートファースト文化を大切にする候補者を引き寄せます。大手の RTO 路線へ舵を切った既存企業には、もう真似しにくい差別化なんですね。

4. 給与開示 +6.9ポイント — レポート全体で最も動いた指標

2つの指標を並べてみます。

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指標2025-052026-05変化
給与を明示20.5%27.4%+6.9 pt
ビザ支援に言及2.6%2.8%+0.2 pt

給与開示が20.5%から27.4%へ一気に跳ねて、12か月で+6.9ポイント。本データセットでいちばん速い動きで、ハイブリッドの+3.6ポイントの約2倍のペースです。引き金は米国の州レベルの賃金透明性法。カリフォルニア州 SB 1162(2023年施行)、コロラド州 Equal Pay for Equal Work Act(2021〜2023年にかけ強化)、ニューヨーク州(2023年9月施行)、ワシントン州(2023年1月施行)あたりが代表格です。いずれも一定規模以上の雇用主に対し、求人票での給与レンジ開示を義務づけています。いったん適用が始まると、複数州をまたぐ雇用主はすべての求人で開示するほかなくなる。隠せばこれらの州法に触れてしまうからです。

もっとも、Hacker News の採用文化はもともと給与を堂々と書く気風があります。それを差し引いてなお1年で6.9ポイントというのは、気風だけでは到底説明がつきません。ほぼ間違いなく規制対応です。

ビザ支援の言及のほうはほとんど不動でした(2.6%→2.8%)。こちらは H-1B / TN / O-1 といった就労ビザ政策の空気を映す指標です。2024〜2026年の米国では、技術職ビザへの政策は緩むどころか引き締めへ。だからビザ支援を軽々しく約束したがらない企業が増え、言及率が横ばい〜わずかな増にとどまるのは、ごく自然な反応なんです。この対比が一つの裏づけになります。Hacker News で給与開示が伸びたのも制度のせい、ビザが動かないのも制度のせい。 どちらも、ただの文化的な好みの揺れではありません。

実務に引きつけると、こうなります。雇用主ブランドで「透明性」をうたいたいなら、ビザ政策より給与開示のほうが効く。賃金透明性法のおかげで開示はもう半ば義務ですから、その義務を「うちは積極的にオープンにしています」と言い換えてしまえば、ブランド面での見返りがいちばん大きい、というわけです。

5. このデータセットの信頼性と限界

この1年半、RTO 論争を引っ張ってきたのは Amazon の週5出社、Salesforce の「チーム合意」、Goldman の恒久出社といった、見出し映えする事例でした。どれも事実です。ただ、それが指し示すのは大手既存企業の広報シグナルであって、もっと広い技術エコシステム全体の採用実態そのものではありません。

これに対して、HN の「Who is hiring?」スレッドが拾うのは反対側の景色です。中小の技術企業、スタートアップ、個人創業者が、公開かつ同業の視線にさらされる場で、自分たちの採用ニーズを率直に書いている。彼らの多くは LinkedIn にも投稿せず、Indeed のスポンサー枠も買わず、リクルーターも使いません。狙っている候補者——エンジニアや初期メンバー——が、もう HN を読んでいるからです。コメントはリアルタイムで読者の目に触れ、反応が返る。この公開査読のフィルターがあるおかげで、HN の採用文は企業の本音を比較的きれいに映すサンプルになっています。

ですから、不明を除いた46.3%というフルリモート比率は「米国労働市場の全体像」ではありません。あくまで、Hacker News の採用コミュニティに自ら参加する企業が、自分の口で公表した働き方モデルです。この2つの読み方、差はかなり大きいんです。

  • 米国労働統計局によると、完全リモート職は米国雇用全体の約10〜15%(2024年)と推定される
  • ただし HN は自選サンプルであり、そもそもリモートに親和的な企業が参加しやすい
  • したがって、今回の46.3%は自選されたリモート親和的な技術系サブサンプルを表しており、マクロな労働市場ではない

この線引きは、読み手にとって2つの意味で重要になります。

グロース・コンテンツチーム向け:「リモートはまだ元気だ」という記事を出すなら、本レポートは十分に引用に堪えます。ただし、サンプルの境界を必ず添えること。たとえば「Hacker News の採用コミュニティという、リモートに前向きな初期技術系へ偏ったサンプルでは、フルリモートはなお46%を占め、前年比の下げは1.8ポイントにすぎない」——この書き方ならレビューにも耐えます。

採用・人事チーム向け:本レポートのハイブリッド比率(リモート親和的なサブサンプル内で26.1%)は、「ハイブリッドこそ新標準」という物語への逆張り材料になります。リモートに前向きな母集団の中ですらハイブリッドが30%に届かないのなら、もっと広い労働市場では、純粋なハイブリッドが主流だとする LinkedIn 的な見え方より、実態はリモートか出社へ振れている可能性がある。「うちはハイブリッド企業です」という雇用主ブランドは、いささか補正をかけすぎているのかもしれません。狙う候補者層の中で本当にハイブリッドを好む人は、マーケ資料が見せるほど多くない、という見立てです。

6. 安定性チェックと他データセットとの比較

前年比のレポートを前にすれば、誰だってこう疑うはずです。この3.6ポイントのハイブリッド増、本物のトレンドなのか、それともサンプリングのノイズなのか? そこで、安定性チェックを3つかけました。

不明カテゴリはほぼ動いていません。 3.0%から3.2%へ、+0.2ポイントだけ。両スレッドで投稿ルールの守られ具合が安定していたということで、意味のある3カテゴリ間の入れ替わりは、実際の構成変化を映していると見られます。「今年はラベルがはっきりした投稿が増えただけ」という解析上の見かけの産物ではない、ということです。

出社型も少しだけ下がっています。 もしハイブリッドがフルリモートからだけ客を奪っていたなら、出社型は動かないはず。ところが実際は、出社型-1.7ポイント、フルリモート-1.8ポイント、ハイブリッド+3.6ポイント。これは、ハイブリッドが両端からじわじわ吸い上げる、教科書どおりの中間地帯の台頭パターンです。極端な乗り換えではありません。

分母もほぼ安定しています。 総投稿数は2025-05 が302件、2026-05 が317件。差はたった15件で、HN 採用コミュニティの採用量は前年比ほぼ横ばいでした。だからシェアの変化は、分母のブレではなく、本物の分布変化を示しているわけです。

hn-posting-data-2025-2026.webp

もっと地に足のついた読み方をすると、こうなります。本レポートのハイブリッド増はかなり堅いものの、±2〜3ポイント程度のサンプリングノイズは現実問題としてありうる。だから PR の訴求としては「Hacker News の採用コミュニティでは、ハイブリッド投稿が前年比で約3ポイント増えた」と書くのが妥当なライン。逆に「ハイブリッドが前年比50%急増」みたいな書き方はやめてください。 HN の投稿は安定したサンプルで、二次的なパーセント変化を大げさに語る用途には向きません。

RTO まわりの公開データはいくつもあって、最初に並べると数字が食い違って見えることがあります。けれど、サンプルの境界を意識して読めば、それらはぶつかるどころか補い合う関係です。それぞれが、同じ現実の別の面を測っているだけなんです。

出典対象範囲典型的な読み取り(2024〜2025)
Stanford WFH Research米国労働者5,000人超の調査米国全体の完全リモートは約14%、ハイブリッドは約28%
Flex Index(Scoop)米国企業9,000社超のポリシートラッカー32%が完全柔軟、55%が構造化ハイブリッド、13%がフル出社
Kastle Systemオフィスのカードスワイプデータ、米国上位10都市圏オフィス稼働率50〜55%(パンデミック前は100%)
Bureau of Labor Statistics米国全体の雇用主調査完全リモートは全雇用の約10〜15%
本レポート(HN Who’s Hiring)HN 採用コミュニティ、619投稿サンプル内のフルリモートは46.3%(不明除外)

これらは矛盾していません。 Stanford が測るのは従業員の行動(在宅で働いた日数という視点)。Flex Index が測るのは雇用主のポリシー(人事・採用ページの視点)。Kastle が測るのは物理的な占有率(不動産の視点)。BLS が測るのはマクロな雇用構成(労働市場の視点)。そして本レポートが測るのは、ある採用チャネルで公に宣言された働き方モデル(採用チャネルの視点)です。視点が5つあれば数字も5つ出る。でも、どれも同じ地盤の現実を指しています。 すなわち、フルリモートは縮みつつも完全には死なず、ハイブリッドは着実に伸びる中間路線で、完全出社はゆっくり構造的に下がっている——この一点に収れんするんです。「業界全体はこうだ」と一般化する文章を書くなら、最低でも2つ以上の視点を突き合わせること。たった1本のレポート(本レポートを含めて)だけでは、「業界全体」を語る資格に届きません。


方法論

データソース:Hacker News Firebase API (https://hacker-news.firebaseio.com/v0/item/{id}.json)。比較対象スレッド:2025-05(item id 43858554)と 2026-05(item id 47975571)。各トップレベルコメントを1件の採用投稿として扱いました(HN の慣例)。取得スナップショット:2026-05-12(UTC)。クリーニング後のサンプルサイズ:2025-05 は302件、2026-05 は317件、合計619件。

HNコミュニティのバイアス(最重要の注意点):HN の採用コミュニティは、開発者、スタートアップ創業者、初期エンジニアチームが中心です。サンプルは SaaS、AI ツール、リモート親和的企業にかなり偏っています。本レポートは米国または世界全体の RTO 動向を示すものではありません。 金融、製造、小売、医療、教育といった伝統産業は、ここで見えるよりずっと高い出社率で投稿しており、その多くはそもそも HN で採用していません。本レポートのフルリモート比率は、自選されたリモート親和的な技術系サブセットの姿であり、マクロな労働市場の姿ではありません。

サンプルサイズの境界:619投稿の合計です。「N社」ではありません。 同じ企業が複数職種を出すことがあります(通常は各スレッドで1回ですが、スレッドをまたぐ場合もあります)。分母は「投稿数」であり、「ユニークな雇用主数」ではありません。企業単位の分析には重複排除が必要ですが、本レポートでは行っていません。引用は投稿レベルです。

解析精度:HN の投稿ルール順守率は約70%で、ルールベースの解析がさらに約15〜20%を補完し、不明カテゴリが残りを吸収します。月次比較を安定させるため、主要指標には不明除外の割合を使っています。不明カテゴリ自体の前年比変化(+0.2ポイント)は、RTO トレンドそのものではなく、投稿慣行の変化を反映しています。

前年比と長期トレンドの違い:本レポートは単一時点の前年比比較です。長期的な軌道を推定するものではありません。 長期研究を行うなら、少なくとも5年×12か月分の月次スレッド(60データ点)が必要です。HN のスレッドは2011年まで遡れるので、これは十分実行可能な次のプロジェクトですが、本レポートが主張している内容ではありません。

スナップショット時点:取得日は 2026-05-12 です。HN のコメントは投稿後は実質的に変更されません(編集はコミュニティ的に好まれないため)ので、このデータセットは安定して再現可能です。対象が動いてしまう Web スナップショット型のレポートとは違い、長期再現性が高いのはこのデータソースの利点です。

法務・著作権:HN API は公開の読み取り専用 API であり、認証なしで取得できます。コメント本文は元の著者の著作物です。本レポートでは集計カウントと短いフレーズ頻度のみを用いており、全文引用はしていません。企業名(トップ一覧)はポジティブな文脈のみで掲載しています(フルリモート投稿数が多い企業)。特定企業に対するネガティブな評価は行っていません。生の CSV / JSON データセットの配布はしていませんが、本レポート内の数値はすべて公開 HN API から再現可能です。

注意事項

本レポートが支持していないこと

  • 「米国のすべての技術企業がフルリモート投稿をX%出している」
  • 「企業Xはリモート求人を出さなくなった」(本レポートは企業ごとの時系列追跡をしていません)
  • 妥当な表現:「Hacker News の採用コミュニティにおける2025-05と2026-05のスレッドでは、フルリモート投稿は全体の46.7%から44.8%へ(不明除外では48.1%から46.3%へ)変化した」

データソースとバージョニング

収集スクリプト:return_to_office_index_2026/00_fetch_hn_who_hiring.py とその下流パイプライン(本リポジトリ)。収集日:2026-05-12(UTC)。レポート版:v1.0(単一時点の前年比)。データライセンス:HN コメントは著者に著作権がありますが、集計統計の利用はフェアユースの範囲です。AI Required Position Rate 2026 レポートと HN データを共有しており、両者は同じ619投稿を別の切り口(働き方 vs AIツール浸透率)から参照できます。

SEO・コンテンツチーム向け引用ポイント

この調査は、ブログの導入文、データコールアウト、SNS投稿、比較ページ、補足解説などで使える複数の引用切り口を生みます。

  • Hacker News の採用サンプルでは、フルリモートが今も最大の働き方:2026年5月の分類済み投稿の46.3%。
  • フルリモートは前年比で1.8ポイントの微減にとどまり、48.1%から46.3%へ。
  • ハイブリッドは22.5%から26.1%へ3.6ポイント上昇し、本レポートで最大の動き。
  • 出社型も29.4%から27.7%へ下がっており、ハイブリッドはフルリモートと出社型の両方から伸びていると考えられる。
  • 給与の明示は20.5%から27.4%へ上昇し、どの働き方区分よりも大きな動き。
  • ビザ支援への言及は2.6%から2.8%へとほぼ変化なし。
  • このサンプルは、米国労働市場全体ではなく、リモートに親和的な技術系採用チャネルを自選して集まったものです。

この引用では、必ず注意書きを添えてください。ここでの数値は、本レポートで使った特定のサンプルと収集方法を表しています。フル市場の国勢調査、社内の導入率、あるいはカテゴリ内の全企業に関する主張として言い換えるべきではありません。

編集用途では、見出しとなる統計とサンプル境界をセットで書くのがいちばん強い表現です。そのほうが、主張が長持ちし、読者にも信頼されやすくなります。たとえば、「この HN 採用サンプルでは」「この DTC ホームページ静的スキャンでは」「この YouTube チャンネルサンプルでは」のようにサンプルを明示してから、数字をより広いトレンドの話につなげてください。

再現性メモ

配布フォルダには、元のローカルレポートパッケージからコピーした次の処理ファイルが含まれています。公開レポートを、実際のスクリプト、中間出力、図表、元原稿と照合できるようにするためです。

  • process_files/out/analysis_stats.json
  • process_files/out/hn_jobs_parsed.csv
  • process_files/out/hn_jobs_reclassified.csv
  • process_files/out/hn_threads_meta.csv
  • process_files/scripts/00_fetch_hn_who_hiring.py
  • process_files/scripts/01_parse_hn_jobs.py
  • process_files/scripts/02_classify_unknowns.py
  • process_files/scripts/03_compute_stats.py
  • process_files/scripts/04_make_figs.py
  • process_files/scripts/05_build_data_brief.py
  • process_files/scripts/06_build_report_bilingual.py
  • process_files/scripts/07_module_i_check.py

スクリプトとデータセットをすべてダウンロード

方法論の修正、データセットの不備、追加分析のご提案は support@thunderbit.com までお寄せください。本レポートは2026年5月に収集した公開Webまたは公開APIシグナルに基づいており、上記のサンプル境界を踏まえてご覧ください。

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Shuai Guan
Shuai Guan
Thunderbit の CEO | AIデータ自動化のエキスパート Shuai Guan は Thunderbit の CEO であり、ミシガン大学工学部の卒業生です。テクノロジーと SaaS アーキテクチャの分野で約10年にわたる経験をもとに、複雑な AI モデルを、実務で使えるノーコードのデータ抽出ツールへと落とし込むことを得意としています。このブログでは、ウェブスクレイピングや自動化戦略について、実践で磨かれた率直な知見を共有し、より賢くデータ主導のワークフローを構築できるよう支援しています。データワークフローの最適化から離れているときは、同じこだわりと観察眼を写真への情熱にも注いでいます。
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