数カ月前、不動産投資をしている友人から、かなり焦った様子で電話がありました。彼女は土曜の午前中をまるごと使って、Zillowの物件データをスプレッドシートに延々とコピペしていたんです。住所ごと、価格ごと、担当エージェント名ごとに。本人いわく、「もう完全に原始人になった気分よ」とのこと。正直、こういう人は彼女だけじゃありません。あるRedditユーザーも、競合分析レポート用にZillowのデータを集める作業を、「まるで原始人みたいにスプレッドシートへコピペしている」 と表現していました。
そもそもZillowは、とにかく規模が大きいサービスです。約1億7300万件の住宅をカバーし、月間平均のユニークユーザー数は約2億2100万人にも達します。米国市場のかなり大きな部分で、物件データの出発点になっているのがZillowです。ですが、ここがやっかいなところです。Zillowは公開APIを終了しており、2026年現在も、一般ユーザーが自分で使える物件一覧の一括エクスポート用公開APIは提供していません。開発者向け規約も審査制で制限があります。つまり、Zillowから物件データをまとめて取り出したいなら、2005年みたいに手作業でコピペするか、スクレイパー拡張機能を使うしかない、というわけです。そこで今回は、実際にどれが本当に使えるのか、そしてどれが4万5000件の物件プロジェクトの途中で詰まってしまうのかを確かめるため、ZillowスクレイパーのChrome拡張5種類を比較レビューしました。本記事では、使いやすさ、取得できる項目、価格、ページ送り対応、ボット対策、エクスポート先まで検証し、あなたが週末を無駄にせずに済むようにまとめています。
そもそも、なぜZillowをスクレイピングするのか?
Zillowには、売り出し中の物件、賃貸物件、FSBO(個人売却物件)、価格履歴、エージェント情報、周辺情報、学校データまで、見慣れた1つの画面に集約されています。不動産投資家、エージェント、卸売業者、アナリストが、最初に調査を始める場所でもあります。NAR 2025 REALTORS Technology Surveyでは、66%のREALTORSが新しいテクノロジーを導入する主な理由を「時間の節約」と回答しました。それでも、BiggerPocketsの比較事例に関する投稿では、ZillowやRedfinのようなサイトから「情報を寄せ集めてスプレッドシートに落とし込む」 という、いまなお手間のかかるやり方が勧められています。
掲示板、製品ページ、ユーザーの会話に共通している用途は次の通りです。
| 役割 | 取得したいデータ | 目的 |
|---|---|---|
| 不動産投資家 | 物件一覧 + 価格履歴 | 比較事例分析、利回り判定、CAGR算出 |
| 卸売業者 | FSBO物件 + 所有者/エージェントの連絡先 | アプローチとリード獲得 |
| エージェント/ブローカー | 競合物件 + エージェント情報 | 市場動向の把握、顧客向けレポート作成 |
| 市場アナリスト | 物件価格 + 周辺/トレンドデータ | 地域市場の方向性を監視 |
本質的な問題は、Zillowが便利かどうかではありません。必要な情報を、パートタイムのデータ入力係にならずに取り出せるかどうかです。
今回のZillowスクレイパーChrome拡張をどう評価したか
各拡張機能を8つの基準で評価しました。公開されている比較記事の多くは、このうち3〜4項目しか触れていません。私は全体像を見たかったのです。
| 評価基準 | 重要な理由 |
|---|---|
| 導入のしやすさ(ノーコードか) | 主な利用者は投資家、エージェント、アナリストであり、開発者ではないから |
| 抽出できるデータ項目 | 住所と価格だけでは不十分なことが多く、エージェント情報、学校評価、売却履歴まで欲しいから |
| 無料枠と料金 | 特に個人投資家や小規模チームでは、予算が重要だから |
| ページ送り / 500件制限への対処 | Zillowは検索結果をおおむね500〜800件程度に制限するから |
| サブページ拡張 | 個別の物件ページに移動して詳細データまで取れるかどうか |
| エクスポート先 | CSVだけでなく、Sheets、Airtable、Notion、CRMにそのまま入るかが実務では重要 |
| ボット対策への耐性 | Zillowはボット対策を使っており、拡張機能ごとの差が出やすい |
| 定期スクレイピング | 投資家やアナリストは一度きりのダンプではなく、継続監視が必要だから |
この8項目をすべて1つの記事で網羅した比較は、私が見つけた限り存在しませんでした。本記事はそのギャップを埋めるものです。

1. Thunderbit
Thunderbit は、Zillow、Amazon、LinkedIn、あるいは基本的にどんなWebサイトにも対応できる汎用AIウェブスクレイパーです。これは私たちThunderbitが開発しているツールなので内部はよく理解していますが、強い点も弱い点も率直にお伝えします。
Zillowでの使い方はシンプルです。Thunderbit Chrome拡張をインストールし、Zillowの検索結果ページに移動して「AIで項目を提案」をクリックすると、AIが価格、住所、ベッド数、バス数、エージェント名、物件URLなどの列を自動で検出します。あとは「スクレイプ」を押すだけ。基本の流れはこれで完了です。

AIによる項目検出
「AIで項目を提案」ボタンは、初めて使う人の反応が最も大きい機能です。CSSセレクタやXPathを手動で設定する代わりに、AIがZillowのページを読み取り、列名とデータ型を自動で提案します。たとえば、物件タイプを分類したい、あるいは「1平方フィートあたりの価格」を追加したいといったカスタム要件がある場合は、「Field AI Prompt」で調整できます。私の経験では、Zillowの検索ページではAI提案の精度は最初から約90%ほどです。たまに列名を変えたり、AIが見落とした列を追加したりする必要はありますが、修正は数秒で済みます。
エージェント情報、価格履歴などを取るサブページスクレイピング
ここが、Thunderbitが多くのZillow特化型エクスポーターと一線を画すポイントです。まず一覧表をスクレイピングしたあと、「サブページをスクレイプ」をクリックすると、AIが各物件ページを訪問し、元の表に詳細データを補完していきます。これにより、検索結果の一覧には出てこないエージェント名、電話番号、価格履歴、市場滞在日数、学校評価、HOA費用などを取得できます。
「前後比較」はこんなイメージです。
| 住所 | 価格 | ベッド数 | → エージェント名 | エージェント電話番号 | 市場滞在日数 | 学校評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 123 Oak St | $450,000 | 3 | Jane Smith | (555) 123-4567 | 14 | 8/10 |
この補完作業があるかどうかで、単なるスプレッドシートと、営業・比較事例分析・市場レポートに使える実用データの差が生まれます。
ページ送り、クラウドモード、定期スクレイピング
Thunderbitは、クリック式のページ送りと無限スクロールの両方に対応しています。Zillowでは、検索結果を複数ページにわたって自動で進めることができます。実行モードも2種類あります。
- ブラウザモード は、ログイン中のChromeセッション内で動作します。Zillowからは通常の利用者が見ているように見えるため、検知リスクを低く抑えられます。
- クラウドモード は、リモート環境から最大50ページを並列処理します。かなり高速ですが、より保護の弱いサイト向けです。
Zillowに関しては、私はブラウザモードを推奨します。速度を少し犠牲にしても、検知リスクが下がるメリットのほうが大きいからです。
定期スクレイピングも大きな強みです。価格変動を継続的に監視するための繰り返しスクレイプを設定でき、間隔も自然な言葉で入力すればThunderbitがスケジュールに変換してくれます。価格下落を追う投資家や、市場変化を観察するエージェントにとっては非常に重要です。
Excel、Sheets、Airtable、Notionへのエクスポート
Thunderbitは、Excel、Google Sheets、Airtable、Notion、CSV、JSONへの無料エクスポートに対応しています。これで、「データを取った」で終わらず、「CRMに必要なデータがちゃんと入っている」状態までつながります。競合の多くはCSVダウンロードまでで止まるため、常時使うシステムにデータを流し込むワークフローでは使いにくいことがあります。
料金
2026年8月時点のThunderbitの料金は、1クレジット=1出力行のクレジット制です。
- 無料プラン: 6ページ、1ページあたり最大30クレジット
- Starter: 月500クレジットで$15/月(または年$108)
- Pro: 月3,000クレジットで$38/月(年払いなら30,000クレジットで月$24換算)
無料枠だけでも、Zillowでの使い勝手を試して、自分の用途に合うか確認できます。
Thunderbitの強みと弱み
強み: AIによる項目検出、サブページ補完、定期スクレイピング、多様なエクスポート先、ブラウザ/クラウド両対応、Zillow以外のサイトにも対応。
弱み: クレジット制なので、ヘビーユーザーには有料プランが必要です。ニッチな項目では、AI提案に少し手動修正が必要なことがあります。Zillowの物件を20件だけ一度エクスポートしたい、という程度なら、もっと単純なツールのほうが軽く感じるかもしれません。
2. ScrapperToolによる Zillow Scraper Tool
ScrapperTool は、不動産向けに特化したスクレイピング拡張機能で、Zillow専用モジュールを備えています。Chrome Web Storeからインストールし、無料トライアルを有効化するポップアップフォームを埋めたあと、Zillowの検索URLをScrapperToolのダッシュボードに貼り付けて「Start Process」を押す、という流れです。

取得できるデータ項目と出力
ScrapperToolのZillowガイドでは、以下の項目が抽出可能とされています。
- 物件名、一覧リンク、価格
- エージェント名、電話番号、メールアドレス
- ブローカー名、電話番号
- ベッド数、地域、物件タイプ、面積/サイズ
- Google Maps上の位置、主要施設
このエージェント/ブローカーの連絡先まで取れる点は、リード獲得用途ではかなり有力です。出力はダウンロード可能なCSVファイルです。
複数サイト対応
ScrapperToolはZillow専用ではありません。99acres、Housing、Airbnb、MagicBricks、NoBroker、Quikr、RealEstateIndiaにも対応しています。複数の不動産プラットフォームをまたいで使うなら、この点はプラスです。
不足している点
- Zillowモジュールでのサブページ補完が公式に文書化されていない
- CSV出力のみ(Sheets、Airtable、Notionは非対応)
- 定期スクレイピングなし
- クラウドスクレイピングモードなし
- ページ送り対応は広く宣伝されているが、Zillow専用ワークフローの説明は明確ではない
料金
ScrapperToolは無料トライアルと上位プランを案内していますが、Zillowページ上で明確な料金表は公開していません。アップグレードはメール、電話、WhatsApp経由です。比較検討の段階で価格が見えにくいのは、やや不便です。
おすすめの用途: Zillow物件からエージェント/ブローカーの連絡先を素早く抽出したい人。複数の不動産サイトも併用したい場合に特に向いています。
3. Z Real Estate Scraper
Tidis VenturesのZ Real Estate Scraperは、今回の中でThunderbitに次いで最もドキュメントが明確なZillow特化型拡張機能です。ボタンは「Scrape」「Clear Data」「Download」の3つだけです。

使い方
Zillowの検索結果ページを開き、拡張機能アイコンを押して「Scrape」をクリックします。すると、表示中の物件を読み込むために自動スクロールが走り、以下の項目を抽出します。
- 日付、住所、価格、ベッド数、バス数、面積、物件リンク、1平方フィートあたりの価格
CSVでダウンロードでき、Google Sheetsにもエクスポートできます。Google Sheets連携は、ニッチなZillowツールでは見落とされがちなので、うれしいポイントです。
自動リード抽出(ベータ)
拡張機能の設定では、個別の物件ページに自動移動して詳細データを取得する機能を有効化できます。取得対象は、売主/担当エージェントの電話番号とメール、所有者の電話番号とメール、HOA費用、税評価、建築年、ガレージ台数、冷暖房などです。
ここでTidis Venturesは誠実です。製品ページでは、この挙動がZillowに「自動操作」と判断され、IPブロックにつながる可能性があると明記しています。ページ移動の間隔にばらつきを持たせてリスクを下げる仕組みはありますが、保証はありません。リスクを隠さず最初に伝えてくれるのは好印象です。
不足している点
- クラウドスクレイピングなし — ブラウザ専用
- 定期スクレイピングなし
- AirtableやNotionへのエクスポートなし
- サブページ自動化はベータで、IPブロックのリスクあり
- 無料版は各ページ最初の50件までに制限
料金
無料版あり。ただし物件数に制限があります。PremiumでZillowの無制限抽出が可能になり、詳細データの完全ダウンロードにはElite版が必要になる場合があります。正確な価格表は、見やすい公開マトリクスでは確認できませんでした。
おすすめの用途: シンプルで軽量なZillowスクレイパーを求めていて、必要なら(ただしリスクは承知で)詳細ページ自動化も使いたい人。Google Sheets出力が必要な場合にも向いています。
4. Zillow Mega Data Exporter
Zillow Mega Data Exporter(Chrome Web Storeでは「Zillow Mega Scraper」としても掲載)は、Zillow専用の拡張機能で、主な売り文句は表示件数の上限を超えてデータを取れることです。宣伝文句はこうです。「Zillowマップ上で見えている物件データを、最初の800件だけでなく全部ダウンロードできる」。

良い点
このツールは、結果数の上限問題に真正面から向き合っています。広範囲のZillow検索をかけたとき、表示される物件が一部しかないと感じたことがあるなら、この拡張機能はその不満を直接狙っています。ノーコードで使え、「無制限エクスポーター」を名乗っています。
明確でない点
公開ドキュメントがかなり薄いのが、このグループでの弱点です。以下は見つけられませんでした。
- エクスポートされる項目の正確な一覧
- Google Sheets、Airtable、Notionとの連携
- 定期スクレイピング機能
- サブページ補完
- ブラウザ/クラウドの違いに関する明確な説明
- 有料プランの公開料金表
Webサイトには「Free」バッジと「Limited Time Offer」の表記がありますが、詳細がないため、何に同意しているのか判断しづらいです。
料金
無料枠はあるようですが、それ以上の料金体系は公開されていません。
おすすめの用途: まず困っているのがZillowの表示上限で、とにかく一度きりの一括エクスポートをしたい人。フル機能のワークフロー用途は期待しすぎないほうがよいです。
5. Comp Crunch
Comp Crunch は、この中で最も特化度の高いツールです。用途は1つ、比較事例分析です。通常のZillow検索を実行し、「Get Results」を押して、CSVまたはPDFで出力します。さらに、平均、中央値、25パーセンタイル、75パーセンタイルの価格や、売却済み物件の推移もまとめて表示してくれます。


